私はビデオ制作の仕事に携わって15年になる。ビデオ業界には独特な用語が多い。例えば、「わらう」とは「撮影に邪魔な物を片づける」という意味だし、「八百屋にする」とは「被写体を斜めにする」という意味だ。最近よく使われる用語に「お父さんビデオ」というものがある。ホームビデオがプロ級の機能を備えた現在、お父さんたちは運動会や発表会などで、周りのことなどお構いなしに、ただひたすらわが子だけを撮影する。
つまり「お父さんビデオ」とは、「機材や格好は一流だが、構図も何も考えずに、がむしゃらに被写体だけを撮影する」という意味であり、カメラマンの腕が悪いときに使う業界用語なのだ。
かく言う私も、わが子を撮影する場合は「お父さんビデオ」になる。しかし、そのビデオを見る子供たちは、必ずしも撮影された「自分の姿」に喜んでいるわけではない。むしろ「自分と親がコミュニケーションをとっているシーン」に喜んでいる。妻が赤ちゃん時代の子供たちをあやしているシーン、私と怪獣ごっこをしているシーンなどに、敏感に反応している。
つまり、単なる「自分の姿」ではなく、「自分が親から愛される姿」を見て、聴いて、喜びを得ているのだ。子供が大きくなればなるほど、そのビデオは宝になる。私も、もし親がそのようなビデオを残していたら、ぜひ見てみたいと思う。親がどんなに私を愛しているのか、視聴覚で実感できる。
プロのように撮る必要はない。しかし、わが子を単なる被写体としてだけ撮影することは避けたいものだ。自分や妻が子供を愛しているシーンを多く撮るように心掛けよう。「お父さんビデオ」は、「愛情ビデオ」でありたい。