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お父さんの背中

第15回

 

男らしいお父さんになろう

コラムニスト 大森 浩一郎

 就寝前、火の元の始末や戸締まりの確認をするのが私の日課だ。確認をしながら、いつも心に思うことがある。「戸締まりは万全でも、ガラスを割って賊が強引に押し入り、家族を襲ってきたらどうするか」ということだ。就寝中を襲われれば、ひとたまりもない。そんな非常事態の中でできることといえば、自分の命が尽きる直前まで身を挺して家族を守ることだけだ。

 長女が生まれて以降、このようなことを考えながら戸締まりを続けてきた。生まれたての愛らしい長女を見て、「どんなことがあっても、この子を守る」と誓ったことを忘れないためである。いざというとき、家族のために命を捧げる決意がなくては、一家の責任者とは言えない。もちろん、心配ばかりするのは精神衛生上、好ましくない。しかし、平和になった我が国では、何事においても危機感がなくなり、「家族を守る」というお父さんの基本的な意識さえも希薄になっている。それではいけない。毎晩、心の中で行うこのシミュレーションは、自分に喝を入れる意味でたいへん役立つのだ。

 その結果、独身時代にはつらかったことが、今では何とも感じなくなった。例えば、毎朝早く出勤することはつらくない。徹夜の仕事もつらくない。仕事上のトラブル解決のために奔走することもあるが、やはりつらくはない。むしろ、家族のために心身を削っている自分が誇らしいとすら感じ、苦労が喜びに変わってきた。男は、守るべき家族をもってこそ一人前になれる。そして、そんな男らしいお父さんを、家族は誇りに思うのである。


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